フロイトに関してはお先にコチラの記事を。
フロイトに共鳴を受けた心理学者は多くいますが、その中でも有名人の1人がこのユングではないでしょうか?
カール・グスタフ・ユングはスイスの心理学者です。
元々はフロイトの精神分析に惹かれ、フロイトを継ぐ者として注目されていたようですが、ユングは「フロイトの考え方なんて嫌いだ」てな感じになり、結果としてフロイトとは絶交します。
絶交した原因である「フロイトとユングの理論の違い」と、ユングの心理学とはどのようなものか?について簡単に書いていきます。
ユングとフロイトの理論の違い
一番の大きな違いは、「無意識」に関することです。
フロイトの無意識(エス)は「抑圧の逃げ場」。
個人の抑圧されている願望や記憶、衝動などをしまっているもの。としています。
これに対してユングは「個人的無意識」と「普遍的無意識」の2つに分けています。
普遍的無意識はフロイトの精神分析学で説明がつかない部分を説明するために提唱したようです。
もう1つ違う部分としてはリビドーに関する部分です。
フロイトは性的エネルギーとしてリビドーを捉えていましたが、ユングはそれ以外のこと「全ての本能的な欲動」がリビドーだとしています。
フロイトの提唱したリビドーに関してはコチラ
普遍的無意識とはなんぞや?
ユングの言うところの普遍的無意識は、「人間誰もが共通して持っている認識」とでもいいましょうか。
これは世界中の神話などで共通のイメージがあることと結びつけて説明されています。
その共通のイメージを「アーキタイプ(元型)」といいます。
これはユングが患者の治療に当たる中で、患者の妄想と神話のイメージに共通点を見出したことが始まりだそうです。
また、無意識ではなく、意識の中に唯一ある元型が自我(エゴ)です。
この元型には以下の代表的なものがあります。
アニマ・アニムス
アニマが男性の中の女性像。アニムスは女性の中の男性像です。
例えば、ある男性の中のアニマ、要は無意識下にある理想の女性像がぶりっ子の場合、その男性は現実でもその理想像を好む傾向があるというものです。
オールド・ワイズマン
立派で厳格、権威などの象徴としてのアーキタイプです。
すごく知識が豊富で、権威があり厳格な存在と言えば昔は長老、もしくは歳を重ねた老人が多かったでしょう。
そのイメージが遺伝子レベルで記憶され、このアーキタイプを作っているのでしょう。
このような側面と、破滅に導く老獪な策士という面も持っています。
グレートマザー
包み込む偉大な愛、優しさの象徴でありながら、反面で神秘性や性的魅力、束縛などの面も持っているアーキタイプです。
偉大なる母親は、深い愛情と底知れない威厳と恐怖をもたらす場合もある。
まさに、肝っ玉母ちゃんってイメージがピッタリです。
ペルソナ
社会に対して着ける「建前の仮面」。名前の由来は古典劇で使った仮面をペルソナと呼んだことから。
世間から言われる「男らしさ」「女らしさ」に代表される「~らしさ」が多くの場合ペルソナにあたります。
多くのペルソナを持ち、それを自由自在に上手く付け替えられる人は、世渡り上手である反面、下手をすると「自分」が分からなくなります。
もしくは、表裏一体である「シャドウ」に本心を飲み込まれることもあります。
ゲームのペルソナ4が正にこの関係性を基にして話が作られていましたね。
ペルソナ4はなかなかの良ゲームなので、未プレイの方は是非是非プレイしてみてください。
シャドウ
社会に対するペルソナから見た影の部分「本心の影」。
抑圧されている自分であり、「なりたくない」けど「なりたかったけど、なれなかった自分」の形でもあります。
ペルソナを着けて上手に世渡りしていくため、押さえ込み妥協して諦めた自分の形が鬱積したものと言えます。
ゲームのペルソナ4同様、シャドウと上手く向き合い付き合うことができなければ、精神疾患の原因にすらなりかねません。
代わりに、シャドウと正面から向き合い受け入れることができれば、心は表裏ともに満たされ強いものになっていきます。
トリックスター
今ある権威や秩序を嫌い、無秩序な状態を好む働きを持つアーキタイプ。
北欧神話のロキなんかがこんな感じですね。
変革や循環を望むという性質でもあるので、時代や状況が上手く重なれば歴史に名を残すような人にもなります。
停滞して腐っている今の日本には、圧倒的なトリックスターの元型を持つ人が必要かもしれません。
セルフ
意識にあるのが自我(エゴ)で、無意識にある自分がこのセルフです。
セルフとエゴが上手く相互作用するように心を育てることが、幸せで強い心には必要だとユングは説いています。
まとめ
他にも気に入らない事はあったのかも知れませんが、それは当人でなければ分からない話。
ともあれ、とりあえずこの無意識に関する考え方の違いが、絶交のキッカケになったようです。
普遍的無意識は、どこかオカルトチックにも聞こえます。
しかし、これはそんなに不思議なことではないでしょう。
子供の頃から、絵本や漫画、アニメに映画などあらゆるメディアでこのアーキタイプは利用されています。
魔法学校の校長は、オールドワイズマンのアーキタイプである方がシックリくるし安心できます。
大人に向けての作品になれば、このアーキタイプを逆手に取ったり、奇をてらったりすることも多くなります。
子供向けになればなるほど、そのキャラ設定はアーキタイプに近いイメージが使われやすくなる傾向があります。
また、遺伝子にはその個体の記録を次代に引き継ぐ働きもあります。
人類が脈々とつないできた歴史の中で作られたイメージが遺伝子に刷り込まれていると考えれば納得もできます。
普遍的無意識は人類のイメージ、妄想の歴史と言えるのではないでしょうかね。
これからも人類の歴史が続くのならば、この普遍的無意識の中のアーキタイプは、その姿形を変えたり、数が増えたりしていくのでしょう。